【ゲス男たちでいちばん輝いているのは?】

男なしでは生きていけない十和子をとりまくのは、最悪な男たち。その中で、誰が一番ゲスでしょう? 私的には黒崎です! 
黒崎は十和子にセレブ的ないい思いをさせましたが、そのあとの落とし方がひどい! 

彼の暴力と裏切り行為はまさに極悪非道で、十和子はきっと天国から地獄ほどの恐怖と屈辱を味わったでしょう。

その次は、妻子ある身ながら十和子の体を弄んだ水島です。女と寝ることしか頭にないゲス男なのに、十和子は彼の嘘を見抜けない。
見ていて超イライラしてしまいました。本当に顔と身体の相性が良ければいいんだな、十和子! しっかりしなよ! みたいな。

見た目はいちばんイケてないけど、一途な心を持っているのは陣治です。ただ本当に不潔なんですよ〜。
食事中に水虫の脚をさわったり、すぐご飯をこぼしたり、シャワーあびたことないのかってくらい、いつも汚いのです。おまけに十和子十和子と、しつこい! 

おそらくこの映画を見た女性は、陣治の見た目と行動にドン引きすると思います。しかし、彼は心が本当に清らか。
十和子に執着し、ストーカーまでしていますが、これには理由があるのです。真実のすべてが明らかになるラストは、泣けて仕方ありませんでした。
「十和子を絶対に守る」という陣治の愛の深さにぐっと引き寄せられて、彼が天使に見えたくらいです。

【映画のレベルを上げた俳優陣の熱演】
蒼井優さんは、松坂桃李さんや阿部サダヲさん相手にこれまで見せたことのなかったセクシーな演技を見せ、女優としてのレベルアップ感はハンパありません。
特に中国人女性を演じた『ミックス。』を見たあとにこの映画を見ると、蒼井優の凄さがよくわかりますよ。演技の幅がハンパなく広いです。

松坂桃李さんは、うすっぺら〜い好色な口だけ男を好演。十和子とのベッドシーンでは、囁き声が色っぽく、けっこう生々しくてドキドキ。松坂桃李史上、最高のエロさで勝負しています。

また竹野内豊さんは、お金持ちのイケてる男が徐々にゲスになっていく過程が気味悪いです。やさしい声でひどいことを言うドス黒いイケメンぶりで、新境地開拓です! 

そして阿部サダヲさんは、不潔だけど清らかという見た目と心のギャップが凄く、陣治のすべてが強烈。特に最後の長セリフは涙が止まりませんでした。

俳優陣の熱演が映画のレベルを確実にあげている『彼女がその名を知らない鳥たち』ですが、
なにげないセリフやシーンの中にラストに繋がる伏線が隠されていて、最後まで見ると「ああ、そうだったのか」という謎解きのようなカタルシスも味わえます。

刺激的なラブストーリーを求めている女子必見。本作は紛れもない愛の傑作です!

執筆:斎藤 香 (C) Pouch

『彼女がその名を知らない鳥たち』
(2017年10月28日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:白石和彌
出演:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、村川絵梨、赤堀雅秋、赤澤ムック、中嶋しゅう、竹野内豊
(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会