CDが売れない時代に「また君に恋してる」が大ヒットした理由

――坂本冬美さんは2009年の「また君に恋してる / アジアの海賊」で演歌の枠にとどまらない大ヒットを飛ばしました。
いわゆる演歌ではない楽曲でも人々を魅了できたのはなぜだと思われますか?

若い方がダウンロードして着うたで聴いてくださって。
私の中でイメージしていたのは、長年連れ添ったご夫婦だったり、籍は入れてなくても恋人同士だったりで、そこには長い年月があるというイメージだったんです。
でも、若い方が付き合って半年しか経っていなくても、そこにもドラマっていっぱいあるわけじゃないですか?
 「なるほど!」と思いましたね。ただ長ければいいんじゃなくて、その短い期間にもふたりの仲には嬉しいこともあれば喧嘩もあると、若い方の反応で知ることができたんですよね。
「なるほどなぁ」って。この歌がそうやって広がっていって、心に届く詞や曲を先生方が作り、歌い手が代弁して心に届く歌を歌えばヒットするんだ、ちゃんと受けとめてくれるんだとわかったのが何よりの収穫でしたね。

https://youtu.be/bVYu3f4qfsU




――それは猪俣公章さん、二葉百合子さんの教えの通りでしたか?

もちろんです。それに「CDが売れない」とか「ヒット曲が出ない」と言われていた時代のヒット曲だったわけじゃないですか。
もちろんCDの売り上げよりも配信のほうが大きかったですよ。でも、何より心に届くとういうのが大事じゃないですか。
「今はCDが売れない時代だからカラオケで歌ってもらえる曲を作ってればいいや」ということではないんです。
もしかしたら歌ってもらえないかもしれないけれど、一生懸命心を届けようとする気持ちを忘れずに、素晴らしい詞や曲を作れば届くんだってことを、レコード会社の人たちも再確認できたと思うんです。
「演歌世代のヒット曲はあるかもしれないけれど、広い世代に受け入れられる曲はもう無理だろう」という時代にヒットしたのが大きかったと思います。
それを歌わせていただいたのがたまたま私でした。私は天から授かった宝物だと思っています。



――「また君に恋してる」のオリジナルはビリーバンバンですが、坂本冬美さんの歌声を通すことで大ヒットしたのはなぜだと思われますか?

あの曲が私のところに降りてきてくれたんだと思いますね。
二葉先生の「岸壁の母」も実はカヴァー曲なんですよ(オリジナルは菊池章子)。
二葉先生もカヴァー曲で大ヒットしてるんですよね。だから、その曲との相性なのかはわかりませんが、本当に「降りてきてくれたんだ」と感じますね。



――カヴァーすることに意味があるんでしょうかね?

どうなんでしょうねぇ。
でも、たくさんの歌手の方が数々の名曲をカヴァーし続けて残ってきたわけで、「また君に恋してる」もカヴァーされる時代が来るかもしれないし、
「夜桜お七」を歌ってくれる方が現れるかもしれない。
こうやってつながって名曲は残っていくんでしょうし、私がたまたま「また君に恋してる」に出会えたことは、本当に大きなターニングポイントになりました。



――「また君に恋してる」では、演歌の歌い方とどのように変えましたか?

コマーシャルソング(三和酒類『いいちこ日田全麹』のCMソング)ということで、どこが流れるのかを意識して歌っています。
地声で歌うのか、軽くファルセットで抜くのかもディレクターと相談して歌って。
そして、コマーシャルソングだけどいい歌だから全部録らせていただいて、CD化させていただきましょう、ということになりました。



――演歌ではないフィールドに出たときの坂本冬美さんの強さはすごいですよね。

不思議ですよねぇ。