――音源を聴いてもそうは感じさせないですよね。

いやいやいや! これも必死にレコーディングをして。竜童さんに「真面目すぎる、崩して」と言われても、不良じゃなかったから難しかったんです(笑)。
レコーディングでリズムに乗りすぎていて、つまらなかったと思うんです。
でも「また君に恋してる」の後に竜童さんにお会いする機会があって「なんか色っぽくなったね、いい歌を歌ってるね」とほめていただいて、すごく嬉しかったんです。
「蛍の提灯」のときは若くて歌いこなせてなかったんだなと、改めて感じましたね。本当に艶っぽい歌だと思いますので、今歌ってもぴったりですよね。



――2002年にはご病気で歌手活動を休止されます。
復活までは、二葉百合子さんのご指導を受けたとのことですが、二葉百合子さんの「岸壁の母」のどのようなところに感銘を受けられたのでしょうか?

休んでいるときは歌にも自信をなくしていて。精神的に落ちこんでるときに、たまたま二葉先生の歌を聴いたんです。
そのときに二葉先生は60周年で。
子どもの頃から何度も「岸壁の母」は聴いていて、舞台の袖で聴かせていただいたこともある歌だったんですが、その60年というキャリアでも突き刺さるようなお声なんですよ。
60年経ったら普通疲れてますよね?(笑) でも、突き刺さってくる歌声に引きこまれてしまうような、力強い歌声だったんですよね。
説得力も含めて。
自分も一から力強い喉を作って、力強い歌を歌いたいと思ったんですよね。
歌謡浪曲は詳しくはなかったんですが、先生のもとで一から発声を勉強したいとお手紙を書いて、「いらっしゃい」と言っていただいて、弟子入りをさせていただきました。



――二葉百合子さんからの教えで大きかったものはなんでしょうか?

いろんなことを教えていただいたんですが、「1曲歌うのも20曲歌うのも同じ気持ち、ステージに立つには1曲も20曲も同じなのよ」ということですね。
あと、先生流に言うと「かじっちゃいけない」。
「よーし聴かせてやろう!」とオーバーにコブシを回して、「どうだ聴け!」っていう歌い方をしてはいけないと。
それは「スマートに歌いなさい」ということだと思うんですよ、持てる力を出しきって。
「聴かせてやろう、どうだうまいだろう!」なんて歌は、聴いていて絶対いい歌に聴こえないとおっしゃっていました。誠心誠意、心をこめて歌いなさいということだと思いますね。
手を抜いちゃいけないと。