■新潮文庫 『プロ野球大辞典』 「酒」の項より

○技術的には一流でも精神的に弱いところのあったI ・Y選手は1976年の
 シーズン中、酒を飲んでマウンドに登り、初の完投勝利を記録した。

 「酒なんか飲んで、よく完投できたね」と衣笠が言うと、

 「いや、オーバーに話が伝わっているだけで、本当は酒じゃなかったんです。
 ビールだったんですよ。ほら、あの頃はロッカールームの冷蔵庫にいつも
 ビールが冷やしてあって、誰だって一杯ひっかけて野球やっていたでしょう」


○1982年のシーズン最終戦で、この試合に勝てば優勝というところまでこぎ着けた
 ドラゴンズの近藤監督は、試合開始前、ベンチ裏の机の上にズラリとビールを
 並べて、「さあ、ぐいっと一杯ひっかけて度胸を据えていけ!」と檄を飛ばした。
 ところが緊張していた選手たちは誰も手をつけず、監督ひとりが喉をうるおし、
 チームは試合に勝って優勝を決めた。

 落合博満は「監督が眠っている方が試合は勝てる」と言ったが、監督が酔っ払って
 いるのも悪くないのかもしれない。