ロナウドはロマーリオとは逆に広いエリアで生きる。1シーズンしかプレーしなかったがバルセロナ時代が全盛期だろう。
ハーフウェイラインあたりでボールを持つと、そのまま1人で突進してシュートしてしまうので、ボビー・ロブソン監督までもが「戦術はロナウド」と言っていた。

疾風のように駆け抜ける桁違いのスピード、DFのファウルも振り払ってしまうパワー……あのバルセロナが“戦術ロナウド”になってしまったのは、走り出したら敵も味方も追いつけなかったからだ。
インテルへ移籍してから膝に重傷を負い、キャリア後半はかつての半分以下の疾走距離になってしまったが、その分シュートの精度は上がっていた。

トップスピードで信じられないテクニックを繰り出し、敵にユニフォームをつかまれても30m引きずったままシュートしてしまう馬力を併せ持つ怪物だった。

■存在だけでアシストにも守備にもなる
 
エリア内の魔術師ロマーリオと爆走ロナウド。それぞれ1人でも十分に強力だが、コンビを組むことでその破壊力は何倍にも膨れ上がる。

例えば、カウンターでサイドに流れたロナウドがボールを受けた時、そのままシュートまで持ち込むこともできるが、コースがなければロマーリオへ出せばいい。
アシストが他のFW以上に有力な選択肢となるからだ。また、この2人は1対1ではほぼ止められない。相手はそれぞれに対して最低でも2人以上つく必要があるため、お互いの存在が相方のマークを軽減することになる。

1994年アメリカW杯のブラジル代表はロマーリオとベベット、1998年フランスW杯ではロナウドとベベットが2トップを組み、両大会の間の1997年に実現したのがROROコンビだった。
ベベットには悪いが、違いは歴然。現代で言えば、2人でMSNやBBCといったトリオと遜色ないくらい強烈な2トップだった。

では、具体的にどんなフォーメーションが考えられるだろうか? 画像がROROコンビを現代サッカーに適応させた布陣だ。

ROROコンビの守備面を不安視するかもしれないが個人的には問題ないと思っている。もちろん、パスコースを切るなど最低限の守備はしてもらう。
だが、前線からプレスをかけたり下がって守備ブロックに入るような働きは求めない。むしろ、ブロックに参加せず前線に残っていた方がいいくらいだ。

後方に3枚を残さなければならない相手の攻撃の厚みを削ることができるし、ひとたびボールを奪えば2トップだけでゴールまで行ける。
このコンビの力があれば、5回のチャンスで2、3回は点にする。

現代サッカーでは2トップのうち1枚は下がって9人でブロックを形成するチームが増えているが、
彼らほどの決定力があれば下手に下げるよりよっぽど相手への牽制にもなるし、十分にお釣りがくるという計算だ。

なので、他の選手はしっかり守備ができて2人に質の高いパスを供給できればいい。メンバーはほぼブラジル代表。遊び好きの2人と波長の合う仲間がいた方が気分的にも乗るはず。
ロマーリオは酒もタバコもやらなかったが毎晩のように遊び回っていて、いつも人の家から練習に来るような選手だったという。サッカー選手が遊んでいるのではなく、遊び人がサッカーをやっていたと考えたほうがいい。
それでゴールを量産できるので、チームもそっちに合わせてしまったほうがいいのではないか。

とはいえ、4+4の8枚でしっかりと守ればそこまで守備力が低いわけではないし、ボールを保持できればポゼッションもできるメンバーだろう。
MFにはパウリーニョ、カセミロ、フェルナンジーニョの泣く子も黙るボールハンター3枚を配置する。

唯一、ブラジル以外から選んだのがケビン・デ・ブルイネ。距離の長いスルーパスを出させたら現在トップクラスの選手なので、ROROコンビへ間髪入れずラストパスを供給するために抜擢した。
デ・ブルイネはスピードと運動量もあるので2トップのサポートもできる。手詰まりになった時にはミドルシュートやクロスボールが威力を発揮するはずだ。

基本的にはカウンター狙いになる。ただ、ボランチのパウリーニョはボールを奪うのも巧いが実はゴールゲッターとしての能力が高い。
あまり組み立ては巧くない代わりに、相手ゴール前まで出て行くと地上戦も空中戦も強く、よく点を獲っている。ROROコンビが看板のチームだが、パウリーニョの隠れたストライカーとしての活躍も期待したい。

フォーメーションは[4-3-1-2]で奪ったらまず2トップへ。あとはROROコンビにお任せだが、
相手に引かれたらデ・ブルイネがサポート、さらに攻撃力のある両SBが前へ出て厚みを加えれば、自ずと得点は生まれる。

文 西部謙司

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