『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、
モーリー・ロバートソンが、米大統領選挙でテレビを最大限に利用し勝利した要因から、テレビの特性を理解している小池百合子東京都知事について語る!

* * *

今も昔も、テレビというメディア装置には、大衆を惑わせる魔力があります。アメリカ政治史において、最初にそれを最大限に利用したのは、日本でも有名なあのJ・F・ケネディでしょう。
共和党のリチャード・ニクソンと戦った1960年の米大統領選挙で、ケネディが勝利した最大の要因は、なんと「テレビ映り」だったといわれています。

選挙中に行なわれたテレビ討論会でのディベートは、発言を文字に起こしたものを冷静に読み比べれば、ニクソンのほうが説得力のある内容でした。
ところが、キレイなスーツを着こなし、メイクをばっちり決め、自信満々な態度で乗り切ったケネディのほうが、視聴者に与えたインパクトは大きかったのです。

こうした傾向は後の大統領選でもしばしば見られ、例えば76年のジミー・カーター、80年のロナルド・レーガン、92年のビル・クリントンの勝利には、テレビ討論での「印象」が大いに影響を与えたとされています。

近年の日本政界で、こうしたテレビの特性を最も理解している政治家は、間違いなく小池百合子東京都知事でしょう。
彼女は元キャスターという経歴もあり、しばしば「アウフヘーベン」「ワイズスペンディング」といった印象的なカタカナ語を使うなど、いかにもディレクターが喜ぶような“テレビキャッチー”な振る舞いをする能力が極めて高い。
その魅力に抗えず、各局は彼女の顔を映す時間が長くなる。テレビが映すから支持率が上がり、支持率が上がるからまたテレビが取り上げる…。

よくよく彼女の発言の“遍歴”をふり返ってみれば、原発政策にしろなんにしろ、変節だらけの政治家であることは明らかです。
また、昨年の都知事選でも、今回の衆院選に関する一連の言動を見ても、チャレンジャーの立場をいいことに「改革」や「しがらみ打破」といったワンフレーズの訴えに終始し、具体的なことはほとんど口にしません
(「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」とひたすら連呼したトランプのようです)。小池氏の緑の“戦闘服”が、玉虫色にしか見えないのは僕だけではないでしょう。

ただ、たとえテレビ番組のスタジオにそんな疑問を呈する識者が出演していても、テレビという装置自体が小池氏の存在を欲しているだけに、結局は“甘噛み”に終始してしまう。
特に、視聴率という十字架を背負う民放各局は、いったんお祭りが始まってしまえば付和雷同するしかありません。「モリカケ問題」や「豊洲市場問題」で、こうした“お祭り型スクラム報道”のためにどれだけ無駄な時間が費やされたか…。

人々に期待を抱かせるという点で、小池氏が大変なやり手であることは疑いようがありません。そのやり手っぷりにテレビを中心とするマスメディアが迎合し、それを見る人々は、小池氏に自分の理想や、
現状の政治への不満を勝手に投影する。この3者が互いに作用し合うことで、「小池劇場」という“三つ巴(どもえ)ポピュリズム”が完成するのです。

衆院選の結果がどうあれ、ここまで極端にメディアがジャックされたこと自体、日本という社会の弱さゆえだと思います。昨年のトランプ旋風を鼻で笑っていた日本人に、
大きなブーメランが飛んできた−−そう言っては言いすぎでしょうか?

週プレNEWS
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171025-00093653-playboyz-pol

写真
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20171025-00093653-playboyz-000-view.jpg