もし、俺が監督で、今の大谷を預かったとしたら、二刀流はやらせない。
迷わずピッチャーに専念させるね。ボーンと放って160キロだよ? それだけで十分だよ。
日本のプロ野球に何百人もピッチャーがいて、160キロも投げられるやつ、何人いる?

でも、あの160キロ、普通に打たれるんだよな。スピードガン、いじってるんじゃないかって思うよ(笑)。
大谷も160キロ超えるようなボールを投げられるなら、かすらせないぐらいのボールにしないと。

確かにバッティングもいいよ。あれを目の当たりにすると、両方やらせたくなるのもわかる。
でも、そこは本人のため、プロ野球界のためを考えて、誰かが心を鬼にしないといけなかったんだ。もう遅いけどな。

アメリカでも二刀流でやるとかどうとかいわれてるけど、どうかな。
結局、二兎を追う者は一兎をも得ずになる気がするな。せっかくいいものを持っていながら、どっちつかずになるんじゃないの。
プロだから他の選手も意地があるでしょう。ましてやメジャーともなれば、ピッチャーは研究に研究を重ねて、徹底的にマークしてくるよ。
それを乗り越えるのは容易じゃない。

王は大谷と同じ左バッターだけど、左投手相手でも、とにかく崩れなかった。一度、王に「なんでだ?」と聞いたことがあるんだよ。
そうしたら、対左の時は全部、スライダーをイメージして打席に立っていると言ってたな。正解だよ。そうすると、ピッチャー側の壁をキープできる。
王は才能と努力の人だな。

大谷は今のところ、俺の目には天才としか映らない。「来た球を打つ」という。配球を読んでる感じがしない。
本物のスラッガーになるには、まだ時間がかかるだろうな。ただ、投手をしながらではその時間が足りないんだよ。

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(取材・文/中村 計 撮影/下城英悟)

●野村克也(のむら・かつや)
1935年生まれ、京都府出身。54年、テスト生として南海ホークスに入団。
3年目にレギュラーに定着すると、現役27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。
打者としても歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王など数々の記録を打ち立てた。
70年の南海でのプレーイングマネジャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。 現在は野球評論家としても活躍中