プレーにちょっとでも支障があれば、そもそも招集されていない。ポゼッションスタイルに転換したオーストラリアのパス回しを断ち切るために、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はボール奪取に長け、球際にも強い山口と井手口を起用した。

2人が相手のボランチに強烈なプレッシャーをかけ、ボールを奪うやFW大迫勇也(ケルン)のボールキープを生かし、右の浅野拓磨(シュツットガルト)がスピードで、左の乾貴士(エイバル)がテクニックで大柄で屈強な最終ラインを攻略した。

相手の分析も含めて、よほど会心の一戦だったのか。9月28日のメンバー発表会見で、ハリルホジッチ監督はオーストラリア戦を「我々の今後の基準となる試合かもしれない」とまで位置づけた。

ロシアで顔を会わせるチームは、すべて日本よりも格上だ。ゆえに今後もインサイドハーフがキーマンとなる。ならば、山口や井手口とはまったくタイプが異なる自分が起用されたときに、何を示すべきなの

今回の2試合で求められる答えは、欧州で磨かれた「得点に絡む力」となる。

「よりボールに絡めれば違うよさを出せるし、一人ひとりが違うよさをもっているところがこのチームだと思っているので。僕なりのものを出せれば、さらにチームを(いい方向へ)もっていけるとも思っている。

自分自身のプレーを、しっかりと証明できればいいんじゃないかと」

ともに日の丸を背負って戦ってきたMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)、FW本田圭佑(パチューカ)、岡崎の招集が今回は見送られている。

すでに「87」もの国際Aマッチに出場しているキャリアゆえに、彼らと同じ範疇で見られがちな香川はまだ28歳の中堅だ。

「彼ら(長谷部や本田、岡崎)はコンディションや年齢を考慮されたと思うので。若手や中堅を含めて、試合にあまり出ていない選手は大勢いる。

僕を含めてチャンスがたくさんあると思うし、そこで結果を出すことでワールドカップへ向けて監督が頭を悩ますようにしたい」

危機感を抱いてはいるものの、悲壮感はない。4年前はマンチェスター・ユナイテッドで出場機会を失った悪い流れが焦りにつながり、身心のバランスを崩したままブラジル大会を迎えた。

「いま考えれば、あのときは未熟な部分がたくさんあった。そういう経験を得たから、いまはメンタル的にすごく安定していると感じてもいる。

ワールドカップ前の1年が何よりも大事だと経験値でわかっているし、だからこそドルトムントのいい流れを代表につなげていきたい」

偶然に導かれたのか。ニュージーランド戦の会場は、岡田ジャパン時代の2008年5月24日にA代表デビューを果たした豊田スタジアム。

何度も味わわされてきた苦渋を糧にして、心の部分でひと回り大きくなった感のある“リアル香川”を代表戦で魅せるにはまたとない舞台が整った。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

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