去る14日、阪神の坂井信也オーナーが、本拠地・甲子園球場を電撃訪問した。目的は前半戦を戦い終えた金本知憲監督の激励と、来季続投の正式要請。
球団関係者は「この時期にオーナーが球場まで来て監督を激励するなんて聞いたことがありません」と目を丸くした。それも、そのはずだ。近年の阪神にあって
「監督問題」は、毎年の恒例行事のように繰り返される“秋の風物詩”だったからだ。

 これまでに例を見ないほど、早期に実行された来季の続投要請。そこに、阪神の覚悟が見て取れる。球団からすれば、15年秋の監督就任要請の際に
5年前後の大型契約を提示した経緯もあり、今回の続投は既定路線と言える。とはいえ監督人事では、これまで何度も既定路線を変更してきたのが阪神だった。
だが、今回は様相が異なる。タイガースを根底から作り直すため“三顧の礼”で招へいした金本監督とともに、球団も「超変革」に真っ正面から向き合う方針を、
早期続投要請という形で改めて表明したのだ。

 ただし…。言葉にするのはたやすいが、「超変革」を実行に移すのは並大抵のことではない。世間では、生え抜き主体で昨季リーグ制覇を果たし、今季も
リーグ1位を独走している広島が理想のチーム像として称賛されている。それは、間違いない。ただ広島が今の戦力を蓄えるまでに、どれだけの月日を要したことか。
98年から12年までは実に15年連続Bクラスに低迷。優勝からは実に24年間も遠ざかっていた。その期間に根気強くドラフトで選手を集め、鍛え、
使い続けた。今の広島は、球団とファンが我慢に我慢を重ね、作り上げられたチームだ。

 その状況を阪神に置き換えてみてほしい。必ずしも広島と同じ時間が必要というわけではないが、相当の時間が必要となることは想像に難くない。その期間を
球団、そして虎党が長い目で見守ることは可能なのだろうか。

 そんな疑念を抱く私の取材に対し、ある球団幹部は
「これまでの阪神は80周年で一区切りと思っています。これからの90周年、100周年に向けた新しい阪神タイガースを作ってもらうために呼んだ監督が金本監督です」
と言い切った。ファン心理までは網羅できないが、少なくとも球団は本気だ。幾度となく繰り返されてきた「変節」の歴史に終止符を打ち、金本監督に超長期政権を託して
「変革」に乗り出す阪神。一担当記者として、その歩みを見届けようと思う。(記者コラム・惟任 貴信)

スポニチ
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