天動説と地動説の本質的な違いは、地球が止まっていると考えるか、太陽が止まっていると考えるかです。改めて問います。「止まっている」とは一体どういうことでしょう?

ですがこの時、私たちは暗黙の内に「地面」を基準に定めていることに気付いているでしょうか? もしも私たちが宇宙空間にいたとして、果たして絶対的な意味で「止まっている」とか「動いている」というのを決められるでしょうか?

結論を言うと、私たちの宇宙には何かを「止まっている」と決められるような絶対的な基準は何一つ無い、というのが、20世紀前半に人類が到達した理解です。「止まっている」というのは、見る人が基準を決めて初めて意味を持つ概念です。

このように、何を止まっていると考えるかは人間の都合なので、それによって物理法則は変わりません。であれば、太陽と地球のどちらが止まっていると考えても結論が変わるはずはありません。

この認識に到達した今、天動説と地動説はどちらも正しいのです。私たちは間違っているから天動説を捨てるのではなく、正しいけれど複雑なので通常は使わない。これが21世紀を生きる我々の理解です。