【投資家】迷えるバフェット氏 ちらつく「日本化」の影
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本来、危機の時こそバーゲンハンティングに動くのがバフェット氏の真骨頂だ。2008年の金融危機のさなかには、当時の「株主への手紙」に記した「悲観は友、陶酔は敵」という言葉通り、ゴールドマンなどへの投資に動き、それは見事に報われた。
足元の金融株売りは前回の危機とは対照的な動きだ。
何がバフェット氏にブレーキをかけているのか。ひとつは危機の性質の違いだろう。

急落した割安株(バリュー)は指標面ではお買い得感が出ているが、こちらは経済の長期低迷という逆風を想定すると、手を出しにくい。
Tロウの瀧川一ポートフォリオ・マネジャーは「バリュー株は全般に利益見通しが脆弱な企業が多い。
インフレ局面に戻ってくればバリューにもチャンスがあるが、経済の『日本化』が懸念される中では復活シナリオは描きにくい」と話す。

バフェット氏は長年、総悲観の中で逆張りに動ける決断力と判断力を武器に高い勝率とリターンを得てきた。
投げ売りされるグロース株をバリュー株のようなバーゲン価格で買い、いずれ経済が正常化するまで耐えれば、果実が得られる。

この定石が今回も通用するのか、不透明感は強い。コロナの影響が長引けば、総需要と物価の低迷が定着し、景気低迷で銀行は不良債権を抱え、国債発行の累増で財政と中銀のバランスシートに負担が積み上がるのは避けられない。
デフレ・ディスインフレが居座る日本人にはおなじみの風景の中では、株価上昇は企業の成長より金融緩和頼みに傾きやすい。
これはバフェット氏の好むところではないだろう。
どこかでバフェット氏が動くとしたら、2通りのシナリオが考えられる。
まず米国を含む世界経済の「日本化」懸念の後退、つまりコロナ・ショックからの完全復調が見えたとき。
もうひとつは、たとえ「日本化」した世界でも割安だと確信できるほど米国株が下落したとき――市場でささやかれる「二番底」が現実になったときではないだろうか。