ここまで見たように「ロン・ヤス」関係はレーガンの思いつきなどでなく米国の綿密な戦略とシナリオの産物だった。
歴代の大統領と側近は米国の国益を第一に考えて周到な情報収集を行い、相手国の首脳の弱み、願望を調べ上げ、必要
なら歯の浮くような台詞も用意する。そのシナリオを完璧に演じきったのが俳優出身のレーガンだった。

 だが、レーガンが中曽根に対して抱いた親近感と友情は本物だったようだ。それは死後に公開された日記が裏付け、
また在任中に彼は中曽根にある極秘の外交工作への協力を要請していた。それが成功するかどうかで国際情勢が大きく
動き、米政権の命運さえ左右するかもしれない。 

「ロン・ヤス」関係が生んだ陰のドラマ、それは中東でイスラム教武装組織に拉致された米国人人質を救出するCIAの
極秘工作だった。(敬称略)

(3)へつづく