まるで世を忍ぶ仮の姿?謎多き「紀州鉄道」の正体やいかに……
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皆さんは「紀州鉄道」という鉄道会社を知っているだろうか。

その駅数はわずか5駅、運行距離も2.7キロで、2019年現在で「日本最短のローカル線」を公称している。更には
全線非電化、そして平均時速はおよそ25km/hといった、リニア新幹線が500km/hを超えようかという時代で、
同時期の話とは思えないような、まさに典型的なローカル線と言えよう。一見、普通の地方鉄道であるのだが、
多くの謎を抱えていた……その実態を探ってみた。

「紀州」なのに、和歌山ではなく東京が本社

まず驚くのが、東京に本社があるということだ。「紀州」と言えば、現在の和歌山県にあたる紀伊国の呼び名であり、
「紀州梅」や「紀州犬」、近年ではワイドショーを賑わした「紀州のドン・ファン」でもよく聞く旧国名だ。しかし、
この紀州鉄道の親玉である本社所在地は、驚くことに和歌山県ではなく、東京都にある。鉄道路線自体が、和歌山県
御坊市に根を張っているにもかかわらず、その本社機能が関西地方はおろか、およそ600kmも離れた東京・日本橋に
置かれている。その理由は、紀州鉄道の歴史を紐解けば浮かび上がってくる。

複雑怪奇?紀州鉄道の歴史

鉄道会社といえば、鉄道事業を軸に関連するグループ会社・子会社を持っていることが多いのだが、この紀州鉄道に
関してはその逆で、親会社は鶴屋産業という不動産・リゾート開発事業を行う会社である。このことから、鶴屋産業が
東京の企業であるからして、子会社である紀州鉄道も東京に本社を置くのは頷ける。しかし、そもそも何故に東京の
不動産会社のグループに和歌山の鉄道会社が属しているのであろうか。

紀州鉄道はもともと御坊臨港鉄道が前身であり、その御坊臨海鉄道は1960年代には既に経営は厳しく、廃線の危機に
追い込まれていた。しかし、1972年に既に鉄道事業を廃止していた磐梯急行電鉄の不動産部門が御坊臨海鉄道を買収し、
翌年には紀州鉄道に改名した。その買い手であった磐梯急行電鉄も1979年には経営権を鶴屋グループへと移行しており、
紀州鉄道は現在も鶴屋産業の下で運営されている。