思うに、次の世代のもろもろの個性を厳密に規定することのほうが、彼らのあの感情過多や非現実
的な蜃気楼よりもはるかに高遠で尊厳な目的ではなかろうか。いやそれどころか、この地上の目的のな
かでこれにまさる重要かつ偉大な目的がありうるであろうか。恋愛の激情が深く人の心を動かし、それ
が現われるときいかにも真剣であり、この激情の動機とか、またこの激情がひき起こすもろもろの事柄
とかこうした些末な事柄さえきわめえ重要なものとなるのも、この目的があればこそである。この目的を
真の目的として認めるかぎり、そのかぎりにおいてのみ、恋の相手を手に入れるための煩雑さや果てし
ない努力や苦労もその事柄にふさわしいものと見えるのである。というのは、こういうあがきと苦労を
介して生まれでるものこそ、個人として徹頭徹尾くまなく規定されたきたるべき世代だからである。い
やそれどころかこのきたるべき世代は、性的衝動を満足させるためのきわめて慎重で明確な、しかもわ
がままな選択のなかにすでに胎動しているのであって、この選択がすなわち、恋愛と呼ばれるものであ
る。愛しあう二人のいやます恋情は本来すでに、彼らが生みだすことができ、また、生みだしたいと願
う新たな個体の生存意思である。いやむしろ、彼らの憧憬に満ちた眼がたがいに交わされあうとき、す
でにそこに、個体の新たな生命の火が点ぜられたのであり、この生命が、適切に構成された調和のある
未来の個性として告示されているのである。彼らは、真に融合合体することによって一つのものとな
り、もはやただかかるものとしてのみ生きつづけようとする憧憬を感じる。この憧憬は、彼らによって
生みだされた者のうちに実現されるであって、この者のうちに、彼ら両人から遺伝される性質が融合
合体して一つのものとなり生きつづける。逆に、男性と娘が〔結婚前〕たあいに憎みあい、その憎悪が
決定的で永久的なものであれば、これはすでに、彼らが生むことのできるものが出来の悪い、それ自体
不調和で不幸な存在となる予告である。それゆえカルデロンはあの恐ろしいセミラミスを大気の娘とよ
んではいるが、のちに夫殺しの因縁を作る強姦による娘として描いており、そこにも深い意味が宿って
いる。