■歴史的価値が注目され世界遺産に登録

 長崎造船所は香焼工場の売却後は、防衛省向けの護衛艦を造る本工場だけとなる。

 造船の衰退が早まるなか、皮肉にも、その歴史的価値がスポットライトを浴びた。15年、世界遺産に
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が登録された。

 長崎造船所で、ひときわ存在感を放つのが「ジャイアント・カンチレバークレーン」。スコットランド製で、
1909(明治42)年、長崎造船所が輸入した日本初の電動クレーンである。100年以上もクレーンの
モーターのうなる音が、三方を山に囲まれたすり鉢状の湾内に響き渡った。

 クレーンの音が聞こえなくなったとき、造船の灯が消える。その日は近い。

 ICT(情報通信技術)や航空機関連など新産業の育成に力を入れ、事業構造の大転換を図る。“スリーダイヤ”の
輝きを、再び取り戻すことができるのだろうか。

(有森隆/ジャーナリスト)