かつて、派閥は総裁候補養成機関であり、派閥のトップになることが総裁(総理)候補になるための必須条件だった。
当然、各派のトップはイコール総裁候補。だが、今の派閥はどうか。7派閥のうち、総裁候補といえる人材を抱えている
のは石破派と岸田派の2つだけしかない。

 今、総裁候補として名前が挙げられているのは岸田文雄、石破茂、河野太郎、加藤勝信、菅義偉らだが、以前は「禅譲」
が噂されていた岸田は、その「戦闘能力」欠如から完全に失速し、石破は安倍総理や大多数の安倍支持派閥から包囲網を
敷かれ、身動きが取れない状況に陥っている。その他の顔ぶれは全くの未知数だし、自ら積極的に動く気配もない。今の
自民党には競い合いのかけらもない。野党が政権を奪う可能性がほとんどないから、政党間のせめぎ合いもない。

 安倍総理にとって、この状況は確かに「思うつぼ」かもしれないが、自らが政権の座を守ることしか考えず、後継者の
育成に全く取り組まないどころか、その台頭を力で抑え込もうとする姿勢は、無責任との批判を受けて当然だろう。
「安倍4選」の可能性が、現実には限りなくゼロに近い状況の中で、しっかりとした後継者を競い合いの中で育てていく
ことはリーダーの義務でもあるはず。まともな後継者も育たない状況は、日本の将来に暗い影を落としている。
リーダー候補の劣化が、この国を滅ぼすことになるかもしれない。