ゴーン保釈不許可も…クーデター失敗で続く日産の暗中模索
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 電撃逮捕から53日。会社法違反の特別背任容疑で東京拘置所に身柄を置かれている日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の勾留期限が11日、切れた。

 東京地検特捜部は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)での起訴に続き、特別背任罪で追起訴。証券取引等監視委員会は10日 、2018年3月期までの
3年間の有報に役員報酬を計約42億円少なく記載したとして、金商法違反でゴーン前会長と日産らを追加告発した。

 追起訴を受けてゴーン被告は保釈請求したが、認められる可能性は低い。弁護人を務める元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士が「初公判まで保釈が認められないケースが多い」
と言った通り、容疑を全面否認する限り、身柄拘束はほぼ解かれないからだ。

■日産幹部は「視界真っ黒」

 特捜部に駆け込み、司法取引までしてゴーン被告を売った日産サイドは、この展開にホッと胸をなでおろしていることだろう。勾留理由開示手続きで持論をとうとうと述べ上げて
いたように、ゴーン被告は自由に発言する機会を得れば、何を言い出すか分からない。

 もっとも、クーデターまがいの手口でゴーン被告を引きずり降ろしたものの、その引き金となった大株主の仏ルノーとの提携見直しはちっとも進捗していない。それどころか、
こじれにこじれている。筆頭株主の仏政府の意向で日産との経営統合を模索するルノー側は不信感を強め、態度を硬化させている。

「ルノーとの交渉を主導する西川広人社長は、〈私たちは会社の仕事に集中したい〉とポーカーフェースを貫いていますが、内心は相当焦りを強めているのではないか。幹部が
〈視界は真っ暗。先が全く見えない〉とコボしていたと聞きます。提携見直しは暗礁に乗り上げてしまったようです」(自動車業界関係者)

 西川サイドは電撃逮捕直後にゴーン被告の会長職を解いたが、ルノーも後に続くと踏んでいた。

「ところが、ゴーン氏を利用して日産との経営統合を画策し、日産の資産をさらに吸い上げようとしていた仏政府はカンカン。推定無罪の原則をタテに現在もルノーCEOの
ゴーン氏を守る方針に変わりはないようです」(前出の自動車業界関係者)

 となれば、少なくとも1審判決が出るまで膠着状態が続く。ゴーン事件の証拠は膨大な上、英文もたんまりある。公判前整理手続きの証拠開示で資料にあたるのは弁護側に
とっては骨の折れる作業で、「半年はかかる」(大鶴弁護士)というから、初公判は秋以降にもつれ込むとも言われている。日産は暗中模索から抜け出せそうにない。