報酬額で大モメ「官民ファンド」は天下り先の“オモチャ”
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 高額報酬を巡って、経産省が官民ファンドの「産業革新投資機構」(JIC)と対立。4日、世耕経産相が経産次官を処分して、自らも給与の自主返納を発表する異例の事態になっている。

 JICは今年9月発足。田中正明社長ら民間金融機関などから招いた役員に、業績連動を含めた年収で最大1億円超を支給することになっていた。ところが、これが一部で報じられ、政府内で
「高すぎる」と批判が噴出。慌てた経産省が一方的に支給額を撤回し、JIC役員らが反発したというわけだ。田中社長は「取締役全員で一致して行動する」と納得せず、経産省は田中社長の
解任含みで検討しているという。

 田中社長とはどんな人物なのか?

「三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長ですが、頭取候補にもなった大物バンカー。MOF担(旧大蔵省担当)だった関係で金融庁の森信親前長官と親しく、金融庁参与も務め、
タッグを組んで『森改革』を実行していました。はっきりモノを言う“うるさ型”。森さんが自身の退任に伴い、JICの社長に押し込んだともいわれています」(金融ジャーナリスト・小林佳樹氏)

 高額報酬とはいえ、もともと経産省がOKしていたのだから、田中社長が激怒するのは無理もない。むしろ問題は金額ではなく、JICの存在自体だ。2009年に設置された「産業革新機構」
が前身。お題目は「ベンチャー投資」だったものの、半導体大手の「ルネサスエレクトロニクス」や日の丸液晶メーカー「ジャパンディスプレイ」など凋落企業の救済マシンと化し、散々な評価だったのだ。

 加えて、革新機構の設置期間が15年間で2024年度までだったのを、JICに改組することで2033年度まで延長。「経産省が天下りの受け皿を維持し続けたい不純な動機」(小林佳樹氏)
という見方がもっぱらだ。

 元経産官僚の古賀茂明氏もこう言う。

「もはや産業界への影響力を行使できない経産官僚にとって、官民ファンドは『自分たちが動かしている』という“やってる感”を味わえる数少ないオモチャ。それで延命策として衣替えしたわけです。しかし、
前身の産業革新機構の案件を見ても、民間に任せればいいものばかりで、官民ファンドである必要はありません。政策的な支援なら補助金でやれますしね」

 報酬額で大モメして醜態をさらすより、解体が先だ。