■株式比率について放置は許されない理由

 株式比率について、放置しておくことは、アメリカファンドや中国ファンド、村上ファンドのようなファンドの介入を招き、日産、あるいはルノーの10%以上の株式を買い占めた上で、ルノーと日産両社に「高いほうに売る」
と売りつける交渉を持ちかけることも考えられるので避けるべきだ。10%程度の両社の株式が、覇権を決める決定打となる可能性が高いのだ。また、一方的に日産が勝利してしまっても、あるいは硬直状態に至っても、ルノーは
日産の株式を「報復として」、現在の契約が有効かどうかも分からないが、とんでもない相手に売却して手を引く手立てもあることになる。このような情勢から、緩やかな覇権争いが望まれるのだが、その場合、株式比率から
考えると、日産が不利になる可能性が高い。

 ルノーが保有する日産株式は43.4%と見られているが、日産の自社株が7.3%あり、ルノーの持ち株と自社株で50.7%になる。これは、カルロス・ゴーンによる良く考えられた仕組みで、フランス独自で日産を完全支配する
ことはできないが、日産を実力で支配していると、自社株と合わせれば過半数となり、日産を完全支配できることになる。カルロス・ゴーンは、フランス政府に支配されることもなく、日産側を支配して、両者から必要な人材
であると認知される独特のバランスを作り上げていたのだ。今後の展開は、まずは日産取締役会を日産側が支配できるかにかかっている。つまり、会長人事がポイントだ。

 これは、金融の専門家ならば、もっと詳細に理解できることなので、混乱を防ぐ意味で準備しておくことだ。西川社長と日本政府に期待したい。

 次は、禁断の手法と思われている「労働組合」との共闘を考えてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)

続きは:【コストカッター、カルロス・ゴーン(8)】 日本側経営陣は組合と連携せよ