【コストカッター、カルロス・ゴーン(7)】ルノー(フランス政府)との敵対的攻防を想定せよ
https://www.zaikei.co.jp/article/20181205/481957.html

 ルノー・日産・三菱のアライアンスでは、資本構成が注目されている。これは当然だが、「日産はルノーの子会社」の立場であり、株式比率で対等になるのは容易ではあるまい。さらに、2017年9月に発表された中期計画
「アライアンス2022」によると、プラットフォーム、ミッションなど「共通部品化」を大幅に進める計画で、互いにアライアンスを解消することは、ほぼ困難であると見てよいはずだ。現計画では明示されていないようだが、
サプライヤー計画がそれに含まれるはずで、この計画を達成する規模であると、製品企画、設計段階からサプライヤーの参画も必要と思われ、アライアンス内のスイング生産などを実現する計画となるはずだ。

■株式比率・経営者レベルと、現場の「合併」の実感との乖離
 2018年3月1日、「アライアンスの機能統合を加速する複数のプロジェクトを始める」として、開発部門などの統合を進めているようだ。株式比率・経営者レベルなどの統合より、現場では「合併」の実感があるのかも
しれない。日産の「ルノーの子会社としての立場」は現場で進行しており、管理職などのルノーからの派遣は進んでいる。この中で、日産の販売台数が多いことなどだけでなく、技術的優位性がルノーに持ち去られるとの懸念は、
どうしても起きてくると見てよいだろう。

 こうした、現場サイドでの「日産のルノーの子会社化」が進む中で、株式比率による覇権争いが繰り広げられるのだが、株式知識だけでは理解できない情勢を踏まえてほしい。部品共通化などのサプライチェーン構築のため、
開発からの生産技術において、3社連合は1千万台クラブとして後れを取る訳にはいかないのだ。それは、マツダの例を見るまでもない。

 「混流生産・スイング生産・順序生産」などはアライアンスの中心的課題であり、今更解消できるアライアンスではないことを踏まえて、株式比率の問題を考える必要がある。法的には株式比率で企業の所有者が決まるのだが、
現実の所有者は、実力できまるものだ。この乖離は大変危険であり、「戦い」の原因となるものだ。今回のゴーン逮捕に至った根底に、この乖離があるものと考えるほうが現実的であろう。

■敵対的関係と想定し準備が必要
 現場サイドでの「日産のルノーの子会社化」を見ると、表向き敵対的関係とならないと思われるが、常に警戒することが必要だ。これから、プロキシーファイト(Proxy Fight)(委任状争奪戦)、TOB(take-over bid)
(株式公開買い付け)や、フランス側のLBO(Leveraged Buyout)(買収相手の事業・資産などを担保に資金を調達する)などに発展する危険があるのであり、すでに会長人事で覇権争いが表に出てくる可能性がある。
フランスが利口であるのなら、次の株主総会まで大人しくしていくほうが利口なのであろう。会長職は臨時処置として西川社長に兼務してもらうことが出来るのであり、日本側は次の株主総会までにルノー株10%買い増しを
取締役会で決議しておいて、ルノーの承諾が得られない場合、そのまま押し切る決意が必要であろう。それには、ルノーとの覚書(契約)内容の解釈が問題となるが、それがルノーの言動に対するけん制の役を果たすであろう。

 日本側にはLBOはできないが、いつでも10%のルノーの株式を日産が買い増すことが出来るように、2、3のファンドに資金を回し、ルノーの株式を買い集めておくなどの処置を取るべきであろう。そうしたアンダーグラウンド
での備えが必要な情勢と言えるだろう。日本政府が裏工作を行っておくことがルノーに知られずベストと思うが、日本政府はどのように出るのだろう。逆に、ルノーはフランス政府を通じて静かに準備するかもしれない。または、
正面からフランス政府が7%以上の日産株式を買うかもしれない。