パナ伝説のエンジニアが語るイノベーター論
特許件数1300件、ライセンス収入は380億円
「HILLS LIFE DAILY」編集部 2018年05月20日
https://toyokeizai.net/articles/-/221075
代表的なのが「振動ジャイロ」で、この技術からビデオカメラやデジカメの「手ぶれ
補正」技術が生まれています。これだけでも世の中に大きな恩恵をもたらしたと
言えますが、さらにさらに、海外大手半導体メーカー製CPUに採用されている
「省電力CPU」、日米欧の地上波デジタルTV放送の基幹部を担う「規格必
須特許」、コピー・ワンスやダビング10といった“光ディスクへのコピー”を実現さ
せた「光ディスク規格(BCA CPRM)」、同じく光ディスクソフトの「ゲーム用光
ディスク技術」、3D放送に不可欠な「3D符号化技術」、そして最近では「光
ID技術(リンクレイ)」といった技術を発明していらっしゃいます。
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無線研には「丁稚奉公」があった!?
大嶋:ほかにも、無線研には変わったところがありました。何か新しい技術を開発した場合、
普通の研究所であれば、「引継書を作って工場にわたしてオシマイ」じゃないですか。しかし
無線研では、少なくとも最初の1回か2回は、工場へ行き、設計して、製造して、品質管理
して、販売して……と、最後までやらされるんです。大体2年くらいかかりっきりになり、それ
でまた帰ってくる。この一連のプロセスを、私は「丁稚奉公」と呼んでいました。

これを一度やると、自分でやったことの「出口」がわかるんです。品質がどうとか、コスト意識
とか。たとえば部品代が50円だから原価50円でできると思っていたところ、実際に事業目論
見書を作ってみると、はんだ付けの工賃などさまざまなコストがかかるわけで、結局750円に
なることを知るんです。そうすると、どこを削ったらいいかがわかってくる。こうした丁稚奉公で、
事業、つまりは出口がわかる研究者が育つのです。

さらには営業の最前線にも出るので、お客さんの声を聞くことができる。実によくできたシステム
だと思いました。これらを含めて、無線研は「あまりにもよくできている」ので、これは幸之助が
絡んでいるに違いないと、後になって気づいたわけです。

そんな無線研から、私は一度追い出されました。
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発明したのは「2番目の出口」
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「ソーシャライズしてはダメだ」とアラン・ケイは言った
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松下幸之助は、無線研というハコを作って500人くらいの研究者を集め、少し尖った無垢な新
入社員をそこに放り込み、どんどんイノベーター菌に感染させていきました。立ち上げ当初、無線
研には大学の助教クラスや、通産省(当時)の研究所からイノベーターたちが集められおり、その
マインドやノウハウを、私たちのような後輩の研究者は伝承することができました。しかし■失われた
20年の影響で■、現在その伝承は分断されてしまっています。私のこれからの使命のひとつは、その
状況を打破し、若い世代のイノベーターを育成していくことだと考えています。

当社は今年100周年を迎えますが、現在の社長である津賀一宏は、創業以来、初めての研究
所出身者です。しかも無線研究所出身ですので、イノベーターに理解がある経営者です。これ
を好機としてイノベーションの風土が生まれ、若きイノベーターも育ち、よりイノベーティブな企業と
して、次の100年に向けて大きく飛躍することを期待しています。