ニッポンあれやこれや 〜“日独ハーフ”サンドラの視点〜
女性ばかり肌の露出が求められるドイツ ボディースーツの体操選手が問いかけるもの
2021.06.06
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先日ドイツである女性体操選手が話題になりました。来月の東京オリンピックに出場予定のSarah Voss選手です。
Voss選手はスイスのバーゼルで4月に開かれたヨーロッパ体操競技選手権に従来の「脚を全て露出するレオタード」ではなく、「全身を覆うボディースーツスタイルの体操着」を着て出場しました。
多様化しているとされているドイツの社会で「女性の体操選手がレオタードではなくパンツスタイルの体操着を着た」だけでなぜこれほど注目されたのでしょうか。
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「肌の露出を避けるために全身を覆う服を着る女性」と言うと、ドイツの人たちは反射的に「イスラム教徒の女性」を思い浮かべがちです。
たとえば2016年のリオ五輪の女子ビーチバレーでドイツと対戦したエジプトの選手は全身を覆うユニフォーム姿でした。
これに対し、ドイツ選手は肌の露出が多いビキニ姿。2人の対戦は文化の違いを象徴していました。
ドイツにはトルコ系を始め多くのイスラム教徒が住んでいます。イスラム教徒の女性が着用する肌の露出を最小限におさえた水着「ブルキニ」が、ドイツ社会でもようやく認められつつあります。
でも実は「ブルキニ」について一筋縄でいかない面もあります。過去にはラインラントプファルツ州の市民プールでブルキニの着用が禁止され、イスラム教徒の女性が州を相手に訴訟を起こしました。
同州の高等行政裁判所は2019年、「ドイツの基本法には宗教の自由があるため、ブルキニの着用を禁止するのは法律違反」だとして女性の訴えを認めました。それ以降、ドイツでは少しずつブルキニへの理解が深まってきています。
その一方でドイツには「肌の露出が多くなければ水着とは言えない」という、「水着とはこうあるべきである」とした固定観念も根強く残っています。
そのため女性が「肌の露出の多い水着を着たくない」と感じても、イスラム教であるなど「宗教上の理由」がなければ、世間はそれを認めないようなところがありました。
Voss選手がドイツでこれほど話題になったのは、「宗教上の理由からではなく、自らの意思で全身を覆うスーツを着ることを選択したから」だと筆者は見ています。
本来のレオタードではなく、肌を覆うパンツスタイルのユニフォームを選んだ理由についてVoss選手は次のように語りました。
「体操をしていると、体操着がずれる不安、そしてその姿を狙ってカメラがズームするという不安が常にある。体操をしている思春期の女の子の中には、露出の多いレオタードの体操着が原因で体操を続けたくないと考える子もいる。そういう女の子に対して『こういう(パンツスタイルの)衣装もあるんだよ』と勇気づけたい」
Voss選手自身、子供の頃は露出の多いレオタードが気にならなかったそうですが、思春期になり大人の女性の体型に近づくにつれ、レオタードの着用を「居心地悪い」と感じるようになったと話しています。
その一方でVoss選手は、今後また肌の露出の多い体操着を着るかもしれないとも話しており、レオタードを全面的に否定しているわけではありません。ロイター通信のインタビューの中で印象的だったのは、Voss氏が「大切なのは女性が自由にユニフォームを選べること」と語っていたことです。
また、Voss選手はインタビューで「女性のズボン(パンツスタイル)の体操着は2012年から許可されている」は2012年から許可されていると指摘し、実用性や自分の好みを考え、上下をつなげるスーツスタイルにしてみたといいます。ラメが入っている赤と黒のスーツはVoss選手自身がデザインしたものです。
===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://globe.asahi.com/article/14365348
女性ばかり肌の露出が求められるドイツ ボディースーツの体操選手が問いかけるもの
2021.06.06
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先日ドイツである女性体操選手が話題になりました。来月の東京オリンピックに出場予定のSarah Voss選手です。
Voss選手はスイスのバーゼルで4月に開かれたヨーロッパ体操競技選手権に従来の「脚を全て露出するレオタード」ではなく、「全身を覆うボディースーツスタイルの体操着」を着て出場しました。
多様化しているとされているドイツの社会で「女性の体操選手がレオタードではなくパンツスタイルの体操着を着た」だけでなぜこれほど注目されたのでしょうか。
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「肌の露出を避けるために全身を覆う服を着る女性」と言うと、ドイツの人たちは反射的に「イスラム教徒の女性」を思い浮かべがちです。
たとえば2016年のリオ五輪の女子ビーチバレーでドイツと対戦したエジプトの選手は全身を覆うユニフォーム姿でした。
これに対し、ドイツ選手は肌の露出が多いビキニ姿。2人の対戦は文化の違いを象徴していました。
ドイツにはトルコ系を始め多くのイスラム教徒が住んでいます。イスラム教徒の女性が着用する肌の露出を最小限におさえた水着「ブルキニ」が、ドイツ社会でもようやく認められつつあります。
でも実は「ブルキニ」について一筋縄でいかない面もあります。過去にはラインラントプファルツ州の市民プールでブルキニの着用が禁止され、イスラム教徒の女性が州を相手に訴訟を起こしました。
同州の高等行政裁判所は2019年、「ドイツの基本法には宗教の自由があるため、ブルキニの着用を禁止するのは法律違反」だとして女性の訴えを認めました。それ以降、ドイツでは少しずつブルキニへの理解が深まってきています。
その一方でドイツには「肌の露出が多くなければ水着とは言えない」という、「水着とはこうあるべきである」とした固定観念も根強く残っています。
そのため女性が「肌の露出の多い水着を着たくない」と感じても、イスラム教であるなど「宗教上の理由」がなければ、世間はそれを認めないようなところがありました。
Voss選手がドイツでこれほど話題になったのは、「宗教上の理由からではなく、自らの意思で全身を覆うスーツを着ることを選択したから」だと筆者は見ています。
本来のレオタードではなく、肌を覆うパンツスタイルのユニフォームを選んだ理由についてVoss選手は次のように語りました。
「体操をしていると、体操着がずれる不安、そしてその姿を狙ってカメラがズームするという不安が常にある。体操をしている思春期の女の子の中には、露出の多いレオタードの体操着が原因で体操を続けたくないと考える子もいる。そういう女の子に対して『こういう(パンツスタイルの)衣装もあるんだよ』と勇気づけたい」
Voss選手自身、子供の頃は露出の多いレオタードが気にならなかったそうですが、思春期になり大人の女性の体型に近づくにつれ、レオタードの着用を「居心地悪い」と感じるようになったと話しています。
その一方でVoss選手は、今後また肌の露出の多い体操着を着るかもしれないとも話しており、レオタードを全面的に否定しているわけではありません。ロイター通信のインタビューの中で印象的だったのは、Voss氏が「大切なのは女性が自由にユニフォームを選べること」と語っていたことです。
また、Voss選手はインタビューで「女性のズボン(パンツスタイル)の体操着は2012年から許可されている」は2012年から許可されていると指摘し、実用性や自分の好みを考え、上下をつなげるスーツスタイルにしてみたといいます。ラメが入っている赤と黒のスーツはVoss選手自身がデザインしたものです。
===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://globe.asahi.com/article/14365348