強豪・横浜を撃破。甲子園に“金農旋風”吹き荒れる──。第100回全国高校野球選手権大会で金足農業高校(秋田)は17日、3回戦で横浜高校(南神奈川)を5―4で下し、準々決勝に進んだ。ベスト8進出は23年ぶり。決勝点となる逆転ホームランを放った高橋佑輔選手(3年)は「全国の農業高校に勇気を与えられたと思う。甲子園で戦う唯一の農業高校として勝ち続けたい」と声を弾ませた。18日の第4試合で近江高校(滋賀)と対戦する。(塩崎恵、前田大介)
鶏舎の掃除 心身鍛錬
歓喜の瞬間は突然訪れた。2―4で迎えた8回裏一死1、2塁。6番打者の高橋選手が相手投手の初球を振り抜くと、打球は放物線を描きバックスクリーンに吸い込まれた。その瞬間、一塁側のアルプス席で生徒らは抱き合い、メガホンをたたき喜びを爆発させた。
高橋選手はレギュラー選手で唯一、畜産動物を扱う生物資源科に所属。学校では鶏の飼育などを担当して週2回、“バット”を“スコップ”に持ち替え、鶏舎の掃除や餌やりをしている。
畜産担当の近江広和教諭(46)は「ふんを一輪車で運ぶとき、腕と背筋にかかる負担は相当なもの。佑輔は誰よりも率先して運ぶ生徒。日頃の掃除で鍛えられたことも、この一打を生んだのでは」と分析。「また勝負どころでしっかり決めろ。頑張れ佑輔」と激励する。
金足農高の地元、秋田県内では17日、テレビ観戦した農業関係者らが、劇的な逆転劇に歓喜した。感動して涙を流す姿もあった。
男鹿市で菊を露地4・4ヘクタール、ハウス24棟で栽培する文ちゃん園芸では、同校野球部出身で11年前に甲子園に出場した納谷(旧姓・船木)拓美さん(27)が研修していることもあり、従業員ら10人がテレビの前で試合を見守った。
2点リードされた8回裏、金足農高が劇的逆転3ランを決めると「まじでー」「やばい」と、叫び声が響き、拍手が沸き起こった。
勝利の瞬間、納谷さんは同校のユニホームを着た娘とハイタッチをして大喜び。「感動した。後輩は夢だ。食べ慣れた秋田の米をたくさん食べて力を付け、ベスト4へ進んでほしい」と激励した。
同農園で働く吉田征子さん(79)は「この年になってこんなに感動すると思わなかった。生きていてよかった。生徒の頑張りを見てこれからも農業を頑張ろうと思える」と選手をねぎらった。
同農園の吉田洋平さん(28)は「秋田の誇り。研修生が金農出身でもあり、農業高校ということで例年以上に応援に力が入る。準々決勝は仕事どころじゃないな」と笑った。
「次も平常心で」 農家で元監督 嶋崎さん応援
一塁側のアルプス席で静かに戦況を見つめたのは秋田県五城目町の嶋崎久美さん(70)。第66回大会(1984年)で金足農高がベスト4に進出した時の指揮官だ。同校の監督として春、夏の計7回甲子園に導き、東北の名将として知られる。監督業を退いた今は、米農家として1ヘクタールで「あきたこまち」などを栽培する。
この日の一戦は、34年前の初戦、広島商業高校戦と重なって見えたという。当時、完全に不利といわれたが勝利。それから一気に波に乗り、べスト4に進出した。「広島商業も横浜高校も甲子園優勝校だが、選手は同じ高校生。次も平常心で戦えば大丈夫。甲子園という農場に素敵な花を咲かせてほしい」とエールを送る。
日本農業新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180818-00010000-agrinews-soci
鶏舎の掃除 心身鍛錬
歓喜の瞬間は突然訪れた。2―4で迎えた8回裏一死1、2塁。6番打者の高橋選手が相手投手の初球を振り抜くと、打球は放物線を描きバックスクリーンに吸い込まれた。その瞬間、一塁側のアルプス席で生徒らは抱き合い、メガホンをたたき喜びを爆発させた。
高橋選手はレギュラー選手で唯一、畜産動物を扱う生物資源科に所属。学校では鶏の飼育などを担当して週2回、“バット”を“スコップ”に持ち替え、鶏舎の掃除や餌やりをしている。
畜産担当の近江広和教諭(46)は「ふんを一輪車で運ぶとき、腕と背筋にかかる負担は相当なもの。佑輔は誰よりも率先して運ぶ生徒。日頃の掃除で鍛えられたことも、この一打を生んだのでは」と分析。「また勝負どころでしっかり決めろ。頑張れ佑輔」と激励する。
金足農高の地元、秋田県内では17日、テレビ観戦した農業関係者らが、劇的な逆転劇に歓喜した。感動して涙を流す姿もあった。
男鹿市で菊を露地4・4ヘクタール、ハウス24棟で栽培する文ちゃん園芸では、同校野球部出身で11年前に甲子園に出場した納谷(旧姓・船木)拓美さん(27)が研修していることもあり、従業員ら10人がテレビの前で試合を見守った。
2点リードされた8回裏、金足農高が劇的逆転3ランを決めると「まじでー」「やばい」と、叫び声が響き、拍手が沸き起こった。
勝利の瞬間、納谷さんは同校のユニホームを着た娘とハイタッチをして大喜び。「感動した。後輩は夢だ。食べ慣れた秋田の米をたくさん食べて力を付け、ベスト4へ進んでほしい」と激励した。
同農園で働く吉田征子さん(79)は「この年になってこんなに感動すると思わなかった。生きていてよかった。生徒の頑張りを見てこれからも農業を頑張ろうと思える」と選手をねぎらった。
同農園の吉田洋平さん(28)は「秋田の誇り。研修生が金農出身でもあり、農業高校ということで例年以上に応援に力が入る。準々決勝は仕事どころじゃないな」と笑った。
「次も平常心で」 農家で元監督 嶋崎さん応援
一塁側のアルプス席で静かに戦況を見つめたのは秋田県五城目町の嶋崎久美さん(70)。第66回大会(1984年)で金足農高がベスト4に進出した時の指揮官だ。同校の監督として春、夏の計7回甲子園に導き、東北の名将として知られる。監督業を退いた今は、米農家として1ヘクタールで「あきたこまち」などを栽培する。
この日の一戦は、34年前の初戦、広島商業高校戦と重なって見えたという。当時、完全に不利といわれたが勝利。それから一気に波に乗り、べスト4に進出した。「広島商業も横浜高校も甲子園優勝校だが、選手は同じ高校生。次も平常心で戦えば大丈夫。甲子園という農場に素敵な花を咲かせてほしい」とエールを送る。
日本農業新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180818-00010000-agrinews-soci